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アンチエイジングひとりごと十勝毎日新聞連載

十勝毎日新聞に「Dr.ミツオカのアンチエイジングひとりごと」というコラムで連載をはじめました。どうぞお読み下さい。

シリーズ目次

  1. 糖質制限食でメタボ解消!
  2. 血糖値スパイクは老化を促進
  3. 食生活改善でがんに負けない体を
  4. 健康維持に欠かせないビタミンD!
  5. 知って得する更年期の知識

健康維持に欠かせないビタミンD!

健康維持に欠かせないビタミンD!1

十勝毎日新聞2017年9月4日号

骨を丈夫にするビタミンDの作用はよく知られています。ビタミンDは、腸からのカルシウム吸収を高め、その結果として血液のカルシウム濃度が上昇し、骨へのカルシウム沈着が促進することで、骨が丈夫になります。

2000年頃からビタミンDに関する研究が急速に進み、骨を丈夫にする骨作用のほかに、私たちの健康維持に関わる様々な作用、すなわち骨外作用があることがわかってきました。今回はビタミンDの様々な骨外作用についてお話したいと思います。

まず、私たちはビタミンDをどのようにして得ているのかについて説明します。一つは食事からで、もう一つは日光紫外線浴による皮下での生合成です。食事では、きのこ類や脂の多い魚にビタミンDは多く含まれていますが、せいぜい取れても1日150IU(国際単位)ほどです。1日の必要量は2350IUほどですので、大部分は日光浴による皮下での生合成によって得ることになります。十分な量のビタミンDを日光浴で得るためには、10時から15時の間に、少なくとも週2回、5分から30分、顔、手足、背中への日光浴が必要です。もちろん日焼け止めクリームを使用しないことが前提です。

しかし過度の日光浴にも問題があります。皮膚の老化の80パーセントは、日光紫外線による老化であることが知られています。シミ、シワなどの皮膚の老化、また老化の果てにある皮膚ガンを予防するためには、紫外線暴露をなるべく避けることが必要です。皮膚の老化と皮下でのビタミンD生合成に関わる紫外線は、主にUVBと呼ばれる中波長紫外線です。日焼け止めクリームを使用すると、皮膚の老化は緩やかになりますが、皮下でのビタミンD生合成は、使用しない時の5パーセント以下になってしまいます。

健康維持に欠かせないビタミンD!2

十勝毎日新聞2017年9月18日号

もう一つの問題は、地球の大気圏のオゾン層が年々減少していることがあげられます。オゾン層の減少によって地表に注ぐ紫外線量は多くなり、皮膚ガンの増加につながっています。オーストラリアの幼稚園では、園児が屋外に出る時は、帽子をかぶり、長そでを着て、なるべく太陽光を直接浴びないような指導がなされています。

また、緯度によっても紫外線量はことなります。例えば、鹿児島は札幌の2倍の紫外線量があります。緯度が高くなれが紫外線量も減ることになりますし、北に行くほどビタミンD不足に陥るリスクが高くなります。

食事中の、あるいは皮下で生合成されたビタミンDは肝臓で25-OH-ビタミンDに変えられ、主に肝臓に貯蔵されます。貯えられた25-OH-ビタミンDは、必要に応じて肝臓から放出され、腎臓で活性型ビタミンDに変えられます。この活性型ビタミンDはタンパクと結びついて様々な臓器に運ばれ、主に細胞核内に存在するビタミンD受容体に結合することで、骨作用や種々の骨外作用をもたらすのです。

ビタミンDは脂溶性ビタミンなので、脂肪組織や肝臓に蓄積されます。したがって過剰摂取にならないように注意する必要があります。

このためには25-OH-ビタミンDの血中濃度を測定することが推奨されます。25-OH-ビタミンDの至適濃度は40〜60ng/mlです。25-OH-ビタミンD血中濃度は、食事と日光浴で得られたビタミンDの合計量をみる良い指標です。

しかし、血液以外に貯蔵されているビタミンDの総量を示しているわけではありません。脂肪量と25-OH-ビタミンD血中濃度は反比例することが知られていますので、肥満者でのビタミンD不足の判定には注意を要します。25-OH-ビタミンDの半減期は15日です。

25-OH-ビタミンD血中濃度が100ng/mlまでは過剰の問題はないとされています。25-OH-ビタミンD血中濃度が200ng/ml以下では中毒症状は出ないと考えられています。

一方、活性型ビタミンDの血中濃度は、ビタミンDの良い指標にはなりません。半減期が15時間と短いこと、副甲状腺ホルモン、カルシウム、リン酸などによって、ある範囲の濃度に厳密にコントロールされているからです。

健康維持に欠かせないビタミンD!3

十勝毎日新聞2017年10月2日号

帯広は北緯43度の北国ですので、冬季は特に紫外線不足になります。その上、寒さのために屋外に出ることも少なくなり、ビタミンD不足になりがちです。

当院では、アンチエイジングドックなどを受けられた際に、25-OH-ビタミンD血中濃度を測定しますが、季節に関わらず、男女ともに約90パーセントの人が至適濃度の40〜60ng/ml以下でした。

不足の人にビタミンDのサプリメントを1日1000〜2000IUを摂取してもらい、3〜6ヶ月毎に血中濃度を測定してみますと、サプリメント摂取で至適濃度をほぼ保つことができます。ビタミンD不足は北国でより深刻ではありますが、サプリメント摂取によりビタミンD不足を予防することができます。

さて、これからビタミンDの骨外作用について触れたいと思います。

まず、ビタミンDとすべてのがんについての報告です。この研究は北緯41度の米国ネブラスカ州の住民を対象に行われました。55歳以上の閉経後女性に、カルシウム1400-1500mg/日、これに加えてビタミンDを1100IU/日摂取してもらいました。すると4年後のすべての癌の発病率は、プラセボ群に比ベ、摂取群では60パーセントも少なくなりました。プラセボ群とは実薬に似せて作った偽薬をのんでもらったグループのことです。カルシウムとビタミンDの摂取状態を改善することで、閉経後女性のすべての癌の発病リスクを減少できると報告しました。

次は、ビタミンDと乳がんについてのドイツの報告です。閉経後の乳がん発病リスクと25-OH-ビタミンD血中濃度は逆相関し、25-OH-ビタミンD濃度が30ng/ml以上では、発病リスクは69パーセントも少なくなりました。このことから、ビタミンD摂取には閉経後乳がん発病の予防効果があることが示唆される、と結論づけました。

ビタミンDと結腸直腸癌の発病リスクについての米国での研究では、高齢女性(60歳以上)においてビタミンD濃度が高ければ、結腸直腸癌の発病リスクは低減する、と報告しています。

ビタミンDと前立腺癌についてのフィンランドの研究では、ビタミンD濃度が低いと前立腺癌の発病リスクは高くなり、特に男性更年期前ではさらに高くなる、と結論づけています。

以上のように、ビタミンD濃度が高ければ、がんの発病を抑える可能性が示唆されています。

健康維持に欠かせないビタミンD!4

十勝毎日新聞2017年10月16日号

次は、ビタミンD摂取と1型糖尿病の発病リスクについてのフィンランドの研究ですが、ビタミンD摂取(200IU/日)は1型糖尿病の発病リスクを減少する、と報告しています。1型糖尿病の病因の一つとして、自己免疫によって膵臓のベータ細胞が破壊され、インスリンの分泌が少なくなることが考えれています。動物実験ではこの自己免疫による破壊をビタミンDが予防することが示されていましたが、ヒトにおいてもその可能性が示唆されました。

話は少しそれますが、北国フィンランドのビタミンDサプリメント推奨量は、1956年は4000-5000IUでしたが、1964年には2000IU、1975年には1000IU、92年には400IUと年々減少していきました。一方、1980年代になるとくる病の発病率が増加してきていることが報告されています。日本でも、乳幼児のビタミンD欠乏性くる病が近年急増していることが報告されています。子供たちのビタミンD摂取量が不足していることは、日本でも今や大きな問題となっています。

次はビタミンDと転倒に関するスイスの研究です。老人ホームに入居中の高齢女性(69-99歳)に、カルシウム1200mg/日とビタミンD800IU/日を摂取してもらいました。プラセボ群に比べて摂取群では筋肉は強くなり、転倒リスクは49パーセントも減少しました。ビタミンDは筋骨格機能を改善し、転倒リスクを軽減すると、結論づけています。

オランダの報告ですが、65歳以上の男女の高齢者を対象に、神経筋機能とビタミンDとの関係について3年間にわたるフォローアップ研究を行いました。神経筋機能を、歩行時間(3メートル歩行しターンしてもどる)、立ち上がり時間(椅子立ち上がり5回)、片足立ち時間(10秒以上)によって評価しました。その結果、高齢男女において、25-OH-ビタミンD血中濃度が20ng/ml以下では、神経筋機能がより低下しており、その後のフォローアップ中、その機能はさらに著しく低下しました。成人人口のほぼ50パーセントが25-OH-ビタミンD濃度は20ng/ml以下であり、この集団に対する対策が必要であると結論づけています。

健康維持に欠かせないビタミンD!5

十勝毎日新聞2017年12月4日号

次はビタミンDと血圧に関するドイツの研究です。高齢女性(年齢74±1歳)を対象に、カルシウム摂取群とカルシウム+ビタミンD摂取群の2群に分け、8週間摂取後に、血圧に対する効果を調べました。摂取量はカルシウム1200mg/日、ビタミンD800IU/日です。

収縮期血圧は、カルシウム摂取群で5.7mmHg低下したのに対し、カルシウム+ビタミンD3摂取群では13.1mmHg低下しました。高齢女性においてカルシウムとビタミンDの不足は、高血圧症の病因の一つに、また、高血圧症の増悪や心血管疾患の発病に、関係している可能性がある、と結論づけています。

ビタミンDとインフルエンザについての日本の研究です。2008年から2009年にかけての冬季に、小中学生を対象に、プラセボ群と、ビタミンD 1200IU/日摂取群の2群に分け、インフルエンザAに罹患するリスクを検討しました。プラセボ群を1.0とした時、インフルエンザAに罹患する相対リスクは、ビタミンD摂取群で0.58へと減少しました。冬季間にビタミンDのサプリメントを摂取すると、インフルエンザAの罹患率が減少する可能性がある、と結論づけています。

次はビタミンDと認知症に関する米国の研究です。男女の高齢者(平均年齢73.5歳)を対象に、25‐OH‐ビタミンD血中濃度を測定しました。結果は14.5%が欠乏(10ng/ml以下)、44.3%が不足(10~20ng/ml)でした。また、23.9%が認知症と診断されました。

認知症では25‐OH‐ビタミンDの平均濃度が低く、特に20ng/ml以下ではより高率に認知症が認められました。ビタミンD不足で、認知症になるリスクは2.3倍に、アルツハイマー病のリスクは2.5倍に、脳卒中のリスクは2.0倍に増加すると報告しました。ビタミンDの欠乏あるいは不足は、すべての型の認知症、アルツハイマー病、脳卒中、MRI上の脳血管障害の指標と関係していました。

この結果よりビタミンDは脳神経血管に対して保護的に作用している可能性が示唆された、としています。

健康維持に欠かせないビタミンD!6

十勝毎日新聞2017年12月18日号

従来からうつ病患者ではビタミンD濃度が低いことが報告されています。これは米国のマサチューセッツ州での研究ですが、冬期に紫外線強度が減弱し、皮膚でのビタミンD生成が少なくなると、うつ病が発病すると報告しました。

特に、高緯度に住む浅黒い肌の人は発病のリスクが高くなるとしています。ビタミンDは、脳内のセロトニンやドーパミンの合成に関与し、またこれらの脳内神経伝達物質の低下はうつ病と関連しています。したがって、ビタミンDと冬期間に発症するうつ病には関連があることをこの研究は示唆しています。

以上述べたように、多くの組織や細胞における骨外作用が、ビタミンDの働きの大きな部分を占めることが知られるようになってきました。その意味でビタミンDは今やビタミンというよりステロイドホルモンの仲間(セコステロイド)と考えられるようになってきました。

2005年から2006年にかけて行われた米国健康栄養調査では、実に20歳以上の成人の41.6パーセントが25‐OH‐ビタミンD血中濃度が20ng/ml以下であり、このレベルのビタミンD不足は、高齢者の骨粗鬆症の発病、転倒ならびに骨折のリスク増加につながっている可能性がある、と報告しています。

ビタミンD血中濃度を測定し、不足ないし欠乏レベルの人には、転倒と骨折のリスクを軽減するために、1日1000IUのビタミンDサプリメントの摂取が勧められています。

ビタミンD不足とがん、感染症、自己免疫疾患、高血圧症、認知症、うつ病などとの因果関係は、未だ確立されたものではありません。しかし、ビタミンDの補充は、未だ結論が出ていないビタミンDの骨外作用にも良い結果をもたらす可能性があります。

今後ともビタミンD研究の動向に注視する必要があるでしょう。

健康維持に欠かせないビタミンD!7

十勝毎日新聞2018年1月15日号

最後に質問の多い事項についてQ&Aでお答えしたいと思います。

Q:ビタミンDをサプリメントで摂ってどのくらいで濃度は上がるのですか?

A:サプリメントを摂って8週間ほどかかるようです。ビタミンDの測定は、保険がきかず、当院では自費で4000円ほどかかります。負担を考えると、頻回には測れないので、半年毎にチェックしています。40から60ng/mlが目安で、なるべく60近くでコントロールしています。一般に100IUのサプリを摂ると、1ng/ml濃度が上がると言われています。

Q:妊婦にビタミンDを摂った方が良いという話は、聞いたことがないのですが。

A:母体のビタミンDが少ないと、胎盤を通過するビタミンDも少なくなり、胎児もビタミンD不足になります。このことが胎児の健康、特に骨の発育に影響します。日本でも前述したように、乳幼児のビタミンD欠乏性くる病が増えています。ビタミンDは母乳を通じても赤ちゃんに与えられますので、母親が十分なビタミンDを摂ることは大事なことです。

Q:インフルエンザが流行するどのくらい前からビタミンDを補給すればいいのですか?

A:摂取を始めると2か月くらいでビタミンD濃度は上がってきます。冬には太陽光の紫外線量も少なくなってくるので、そういう意味では冬だけビタミンDを摂るというのも一つの考えだと思います。

Q:ビタミンDは、ビタミンD2とビタミンD3の2種類に分けられますが、人ではD2とD3は同じように働くのですか?

A:以前は同じように働くと考えられていましたが、現在ではD3が重要な働きを果たしていると考えられています。動物性食品はD3を、植物性食品はD2を多く含んでいます。したがって、動物性食品でD3を取られると良いと思います。北海道で手に入りやすい動物性食品では、いわし、にしん、いくら、シャケ、さんま、数の子、などの魚や魚卵などがD3を多く含んでいます。植物性食品では、干しきくらげや干し椎茸にD2が多く含まれていますが、前述の理由でビタミンDの補給源としての意味は薄れてきているかと思われます。サプリでも、D2とD3のものがありますので、選ぶならD3のものが良いでしょう。

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