コエンザイムＱ10（CoQ10）の臨床

2012.10.29

以前、コエンザイムＱ10の基本について取り上げましたが、コエンザイムＱ10シリーズ２回目の今回はコエンザイムＱ10の臨床利用法やエビデンスなどについてご紹介します。

コエンザイムＱ10の基本【おさらい】

コエンザイムＱ10（CoQ10）は生命活動に重要な補酵素（コ・エンザイム）で、体内でも合成できますが、20代をピークに体内での生成量は大幅に減少するといわれています。エネルギー代謝や抗酸化などに関わるCoQ10には酸化型と還元型の２種類の形があり、摂取した酸化型を体内で還元型に変換した後に利用されることから、最初から還元型を摂取することで、変換力の衰えがちな中高年以降の方でも効率良く補うことができると考えられています。

CoQ10とドライマウス

ドライマウスの原因

ドライマウス（口腔乾燥症）は薬剤の副作用、シェーグレン症候群、精神的ストレス、生活習慣病、筋力の低下などが複合的に関わり、その結果として唾液の分泌量が低下し、発症すると考えられています。唾液は消化液として機能する他、殺菌・抗菌、口腔粘膜の保護や pH 調節などの重要な役割を担うため、ドライマウスになると、舌痛症、う蝕や歯周病、味覚障害、口臭、感染症、摂食嚥下障害などの病態にも繋がる可能性が出てきます。

唾液分泌とCoQ10

唾液を分泌させるには、唾液分泌細胞を正常に働かせる必要があります。CoQ10 はミトコンドリアでのエネルギー代謝の一端を担うため、CoQ10 摂取によりエネルギー生産が増えることで、唾液分泌機能を増進できると期待されています。実際に、鶴見大学歯学部 斎藤教授らは、ドライマウスの患者で還元型 CoQ10 摂取群とプラセボ群を比較したところ、還元型 CoQ10 摂取群の方が唾液中の CoQ10 濃度および唾液分泌量が促進したと報告しました。
（Ryo K et al.Clin Biochem 44:669-674,2011）

CoQ10と片頭痛

片頭痛は、成人の約１割、特に女性は男性の約４倍の有病率で、20～40代に多いと言われています。個人によっては吐き気や嘔吐を伴う深刻な現代病の一つで、その原因は脳血管の拡張と炎症や、ストレスにより脳が過敏になることだと考えられています。また、ミトコンドリアの機能低下により脳内エネルギーが不足することも要因であると言われており、CoQ10 を摂取することで脳細胞のミトコンドリア機能を正常にし、それと同時に優れた抗酸化作用で、他の臓器よりも活性酸素が多量に発生する脳細胞を保護することで、片頭痛が改善できると期待されています。

片頭痛に対する臨床試験

CoQ10 を 150mg/日、３か月間摂取したところ、32名の患者で、１か月あたりの片頭痛頻度が半減したことがわかりました。
(Rosen et al. Cephalalgia 22:137-141)

CoQ10と心不全

心不全の原因は、主に心筋細胞のエネルギー不足と活性酸素によるミトコンドリア損傷だと考えられています。CoQ10は、約30年前からうっ血性心不全の補助薬としても使用されていますが、医薬品としての処方量は 30mg/日 が限界であり、それよりも高用量摂取の方が心不全患者への効果があると言われています。実際、欧米では CoQ10 サプリメントの高用量摂取による心不全対策が広まっています。

その他の臨床試験

オーストリラリアで行われた慢性腎臓病患者85名（平均56.5歳）による二重盲検無作為化プラセボ比較試験で、CoQ10 を200mg/日 単独摂取もしくはオメガ3系脂肪酸 ４g/日 との併用摂取を8週間続けた所、併用群で心拍、血圧、血中中性脂肪値が低下したことがわかりました。
(J Hypertens.2009 Sep;27(9):1863-72）

乏精子症患者39名 (平均年齢35.6歳、平均不妊期間61.7ヶ月) を対象に、CoQ10 60 mg/日 を 12～16 週間摂取させたところ、精子濃度、総精子数、総運動精子数が上昇し、高度乏精子症群では運動率も上昇したという報告があります。
(日本不妊学会雑誌.1984; 29 (4):452-7)

二重盲検無作為化クロスオーバー試験で、17名健常者に CoQ10 を 100mg/日、300mg/日、またはプラセボを８日間摂取させたところ、300mg/日 摂取群はプラセボに比べて主観的な疲労度が低く、自転車による運動負荷をかけても疲労度が軽減したとの報告がありました。

【参考】国立健康・栄養研究所 WEBサイト、還元型コエンザイムＱ10とドライマウス、還元型コエンザイムＱ10と片頭痛、還元型コエンザイムＱ10と心不全（株式会社メディアパーソン）

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