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腸内環境と免疫について1

2013.12.02

近年、改めて注目されている腸内環境は免疫と深く関わっていることが知られています。今回は、「自己とは異なる異物」を攻撃し排除する腸内の免疫システムと、腸内細菌との関係を中心にご紹介します。

腸管免疫は身体を守る門番

腸の主な働きのひとつに、「外界の敵から身体を守る」ことが挙げられます。腸は口や鼻を介して消化管に侵入した物質を体内に吸収して良いものかどうか判断し、望ましくないものはマクロファージや抗体が撃退します。この腸の機能が、腸内環境の乱れによって弱まったり、衰えてしまうと言われています。逆に、腸内環境を整えることで免疫強化に繋がるとの報告も多くあります。

乳児のアトピー性皮膚炎予防

出産を約4週間後に控えた妊婦にビフィズス菌混合末を摂取してもらい、さらにその母親から生まれた乳児に母親と同じビフィズス菌混合末を6か月間だけ与え、乳児が1歳半になるまで追跡調査をした結果、摂取群(119組)と非摂取群(41組)を比較するとビフィズス菌末摂取群の乳児のアトピー性皮膚炎・湿疹の有病率が有意に低いことが明らかになりました。
(第24回日本アレルギー学会春季臨床大会 2012年)

一般的に、出生直後の新生児の腸内は無菌状態であると言われています。「外界の敵」に初めて触れる新生児は免疫力が弱い反面、免疫機構が発達する重要な時期であり、出生後約1週間後の腸内はビフィズス菌が占めていることが知られています。

乳児の免疫力を強くするためには、母親の腸内環境を整えることも大切であると考えられています。

抗生物質と腸内カンジタ菌

経口抗がん剤、免疫抑制剤投与により、腸内細菌叢が変化し免疫力が低下すると言われています。

大阪医科大学での臨床報告で、抗がん剤、免疫抑制剤を投与した患者に乳酸菌配合製品(Lactbacillus acidophilus、Bifidobacterium含有牛乳)を摂取させ、腸内細菌叢への影響を検討したところ、非摂取群に比べてシュードモナス菌、プロテウス菌、カンジダ菌の増殖を抑制させたことが わかりました。特にカンジダ菌は薬剤投与したコントロール群患者の半数以上に著しい増加が見られましたが、乳酸菌配合製品を摂取した群では増加例が1/4に留まったとのことです。
(医学と生物学 Vol.103,1,1981)

カンジダ菌は酵母菌に近い存在であり主に糖類をエネルギー源として繁殖します。カンジダ菌はヒトの常在菌ですが過度に増殖するとアレルギー症状を亢進すると言われています。実際にカンジダ菌(C.albicans)をマウスの消化管粘膜に定着させたところ、コントロール群と比較して消化管の粘膜透過性が亢進しタンパク抗原の吸収が増加したとの報告もあります。
(Gut55:954-960,2006)

高齢者のインフルエンザ発症予防

感染症予防に腸内環境改善が有効であるとの報告もあります。

65歳以上の高齢者にビフィズス菌(B.longum)末を20週間摂取させたところ、プラセボ群に比べてビフィズス菌を摂取した群はインフルエンザ発症者数が少なく、NK活性や好中球殺菌能(自然免疫能)が高まったと報告されました。
(Biosci.Biotechnol.Biochem:74(5), 939 - 945, 2010)

乳酸菌とビフィズス菌

約400種類存在する腸内細菌の中で、病原菌の増殖抑制など、腸内環境を整えてくれる腸内細菌の代表が乳酸菌やビフィズス菌です。乳酸菌は「糖を分解して50%以上の乳酸を産生する菌の総称」、ビフィズス菌は「糖を分解して乳酸と酢酸を産生する菌」であると定義されています。ビフィズス菌は酢酸を産生するため、乳酸菌よりも大腸菌抑制作用が強く、ある菌種では IgG の抑制作用が高いことも示されています。その他、ビタミンB1、B2、B6、B12、K、葉酸などを生成することがわかっています。

一方で「乳酸菌」とは、ビフィズス菌属を含む乳酸菌を産生する菌の慣用的な呼び名であるとの見方もあり、乳酸を産生する腸内細菌には他にラクトバシラス属、エンテロコッカス属、ラクトコッカス属などが存在します。いずれも研究報告が多数ありますが、ビフィズス菌の研究は古くから行われており、膨大なデータが蓄積されています。

ビフィズス菌にも種類がある

ビフィズス菌属にもいくつか菌種が存在し、ヒトと動物では腸内に生息するビフィズス菌の菌種は全く異なります。さらに、ヒトでも乳児期と成人期では、ビフィズス菌種の顔ぶれが異なり、一般的に加齢とともに腸内のビフィズス菌数は減少します。
海外の乳製品では動物由来のビフィズス菌を使用した商品が多いようですが、日本ではヒト由来ビフィズス菌を配合した商品が数多く販売されており、免疫力を高めるためには有効だと思われます。

次回は、腸の免疫システムの詳細なメカニズムについてご紹介します。

【参考】森永乳業(株)資料、体の中の外界 腸のふしぎ:上野川修一

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