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「腸」と栄養について2

2013.07.04

第2回目は、腸と摂取する栄養素との関わりを中心にご紹介します。

腸は消化管の一部

口から入った食べ物の行方について少し大きな画で見ると、食べ物は長い「消化管」を通過しながら分解、吸収、排泄されていることがわかります。

小腸や大腸は「消化管」の一部で、消化管は上から順に「食道」→「胃」→「小腸」→「大腸」となっており、それぞれが摂取された食べ物を最大限に有効利用するべく、日々せっせと働いています。

小腸上皮細胞の大切な働き

中でも小腸の上皮細胞は、体外からの栄養素(グルコース、アミノ酸、脂肪酸等)を吸収することが大きな仕事ですが、その他にも消化吸収や免疫等に関わる様々な ホルモンを放出していることが知られています。それらの重要な働きを担う小腸上皮細胞の機能が、不規則な食生活や炎症、病原体の侵入などによって衰えてしまうことが、様々な疾病の原因のひとつになると考えられています。

大腸での腸内細菌の働き

一方、大腸では栄養素の吸収は、小腸ほどは行われません。しかし、大腸内にひしめくように存在する腸内細菌たちが活躍しています。その数、約100兆個(約1~1.5kg)ともいわれる細菌たちは、小腸で分解できなかった栄養素を分解・吸収したり、乳酸や酪酸などの短鎖脂肪酸を産生して腸内の pH を弱酸性に保つことで悪玉菌(体にとって有用でない菌)の増殖を防いだり、大腸のぜん動運動を促して排泄物を肛門まで送り出す等、多くの大切な役割を果たしています。大腸も小腸と同じく生活習慣の影響を大きく受けており、乱れた食生活や過度のストレス、運動不足は有用な腸内細菌(善玉菌)を減らし、悪玉菌を増やすという腸内環境のバランスを崩すことにつながります。

食物アレルギーの問題

近年、特に注目されている疾患に食物アレルギーがあります。食物アレルギーの主な原因は、食べ物中のたんぱく質が小さなペプチドやアミノ酸まで分解されない状態で細胞内に入り込んでしまうことと考えられています。通常は綺麗に整列している腸の上皮細胞が、食生活の乱れ等によって隣り合った細胞間に隙間があいてしまい、大きなたんぱく質でもその隙間をすり抜け、体内で異物と判断されることでアレルギーを発症すると推測されています。(リーキーガット症候群)

食物アレルギーもまた、腸機能の低下が原因でおこっているとも言えます。

腸機能が乱れる原因は?

腸機能が乱れる原因は様々なことが考えられていますが、栄養に関しては以下のことが挙げられます。

過度の脂肪摂取

過度の、また偏った脂肪酸の摂取により、腸の上皮細胞膜組成の変化や腸内細菌叢の変化が認められています。

細胞膜は脂質で構成されているため、摂取する脂肪の質が正常な腸機能を保つためには重要です。加工食品等に多く含まれるリノール酸(オメガ6系脂肪酸)の摂取を控え、魚油(オメガ3系脂肪酸)の摂取を強化したところ、細胞膜リン脂質のアラキドン酸(オメガ6系脂肪酸)量が減り、細胞組成が改善したとの報告もあります。

また、高脂肪食摂取により胆汁酸 [水に混ざらない油(脂肪)を血中に流すために必要] の分泌過多が原因で、胆汁酸が善玉菌(有益な菌)の細胞膜まで壊してしまい、そのため細菌叢が変化してしまうという説もあります。

腸細胞エネルギー源の不足

小腸の主なエネルギー源はアミノ酸の一種であるグルタミンで、空腹時は筋肉組織から供給されると言われています。食品では主に肉や魚などのたんぱく質に多く含まれているため、無理なダイエットや食が細くなりがちな高齢者などで、たんぱく質の不足がおこると腸の正常な水分調節や栄養素吸収に支障をきたす場合があります。

一方、大腸は短鎖脂肪酸(特に酪酸)を主なエネルギー源としています。短鎖脂肪酸は、善玉菌が食物繊維(難消化性糖質)を発酵・分解して産生させるため、食物繊維を多く含む食品(野菜、きのこ類など)の摂取が足りないと、腸粘膜の萎縮が促進し、腸機能が低下してしまう可能性があります。

最後に、栄養だけではなく、睡眠や運動によるホルモンバランスの改善もセンシティブでダイナミックな腸の機能を回復するためには非常に重要です。

【参考】医師薬出版:臨床栄養 Vol.120 No.6 2012 MAY「腸管と免疫栄養」、講談社:上野川修一著「からだの中の外界 腸のふしぎ」、健帛社:「脂肪の功罪と健康」、太陽化学株式会社:「グァーガム分解物のお話」

2013.06ヘルシーパス提供

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