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アンチエイジング クリニック訪問

日本抗加齢医学会雑誌 ANTI - AGING MEDICINE 2010 Vol.6 No.6

はじめに

北海道の人口は約550万、面積は九州のほぼ2倍、人口密度は九州の5分の1です。私たちのクリニックは、北は大雪山系、西は日高山系、南東は太平洋によって囲まれた、十勝平野の中心地方都市である帯広市にあります。十勝の人口は32万、帯広市は17万で、道内では6番目に大きい市です。帯広市の医療圏は十勝全域にわたっています。当クリニックは市街地から南西方向にあり、隣町に面する市の外れの緑豊かな地域にあります。帯広駅からは車で20分ほどの距離です。

そのような場所で、約2年前にアンチエイジングドックおよび医療を始めました。道東で初めてのアンチエイジングドックということもあり、北見、富良野、釧路などの遠方からの受診者もあります。そして、今年1月に北海道で初めて日本抗加齢医学会の認定医療施設になりましたました。

当クリニックは保険診療が主体で、アンチエイジング医療は患者サービスの一環として、同時にクリニックの付加価値を高める目的で開設しました。東京や大阪などの大都市では、アンチエイジング医療に特化した自由診療のみの医療機関もありますが、地方都市にある当クリニックは、あくまで保険診療の片手間にサービスを提供しています。日本のアンチエイジング医療の発展のためには、開業医の参入が必要だと思っています。日本抗加齢医学会の専門医の数はかなり多いのですが、認定医療施設はまだ限られています。専門医の資格を取られている医師で、アンチエイジング医療を提供したいと考えておられる方は多いのではないかと思いますが、開設に伴う種々のハードルの高さがネックとなり、足踏みをされているのではないでしょうか。私たちの経験がそういう方々のご参考になればと思います。一方、一般の方々には、本稿が現場で行っているアンチエイジング医療の理解につながればと思っています。

医師としての歩み

大学卒業後、郷里の長崎に帰り、17年間循環器内科、その中でも不整脈を専門として、大学病院で最先端の医療に従事してきました。その間、英国ロンドン大学、米国トーマスジェファーソン医科大学に留学し、不整脈の専門家として3年間、臨床および基礎研究を行いました。講師、病棟医長を経て、学生時代を過ごした北海道に戻り、小さな町の町立病院の院長として、救急から在宅まで小児から高齢者までを診る、最前線の地域医療を6年半実践しました。その後、帯広の現在地で30数年間開業されていた先輩医師の診療所を継承し、50歳で開業しました。同時に現国立病院機構帯広病院にて不整脈専門外来を開設し、また不整脈研究会を立ち上げ、地域の不整脈診療の向上に努め、今では不整脈の標準治療が行える施設にまで成長しました。

心臓病専門医からアンチエイジング医療ヘ

30年近く、主に不整脈、心臓病の専門医として患者さんの診療にあたってきましたが、血管の老化の果てに起こる狭心症や心筋梗塞の治療にあたりながら、いつまでも血管を若々しく保つ、予防医学が如何に大切であるかを実感してきました。

2004年に究極の予防医学であるアンチエイジング医学のことを知り、その学問の面白さと重要性のために勉強をしようと2005年に日本抗加齢医学会に入会しました。その後、2006年に日本うつ病学会、2007年にメノポーズと加齢のヘルスケア学会、2009年には日本メンズヘルス学会へ入会し、勉強を続けました。これらの学会に入会したのは次のような理由によるものです。

更年期の一症状としてうつ状態が出ているのか、あるいは脳の病気としてうつ病になっているのか、そのあたりを正しく診断することは、治療をする上で非常に大切です。このためにうつ病学会に入りました。

女性のアンチエイジングを行うためには、更年期と女性ホルモン補充療法に精通しておく必要があり、このためメノポーズと加齢のヘルスケア学会に入会しました。

日本の現在の自殺者は年間に3万数千人といわれていますが、働き盛りの中年男性の増加が目立ちます。社会的あるいは家庭的にも重大な責任を担うこの中年世代は、ストレスを受けやすい環境にあるといえます。加齢による男性ホルモンの低下の上に、過剰のストレスを受けた際には、発汗、動悸、めまい、冷えなどの自律神経症状、性機能低下、うつ状態などを呈するようになります。これがいわゆる男性更年期障害ですがそれらの人たちを診療するためにも男性医学に対する理解が必要であると認識し、日本メンズヘルスケア学会に入会したわけです。

このようにアンチエイジング医療は、いろんな領域にまたがっていることを強く認識しました。今までの医療は、タト科、内科、婦人科、泌尿器科、精神科などと縦割りの診療体系でした。しかし、アンチエイジング医療を始めるにあたって、各科にわたる横断的な幅広い知識が必要であることを認識したわけです。このことは心臓病、不整脈の専門家として歩んできた、私の医師としての幅を広くしてくれたように思います。アンチエイジング医療を学ぶようになってから、患者さんに対して話す内容も変わってきました。病気や治療の説明のみならず、病気を予防するために運動、栄養睡眠などをどのようにしたらよいか、具体的に話すようになりました。今考えてみれば、患者さんにとってこれらの情報は最も必要なものではなかったかと思います。

禁煙外来の開設

アンチエイジング医療の実践として、ドックを開設する前に、まず行ったことは禁煙外来の開設でした。喫煙はアンチエイジングの最大の敵ですも喫煙をしながらアンチエイジング医療を行ったとしても、その効果は喫煙によってキヤンセルされてしまいます。禁煙外来が保険診療の対象となる前の2006年に開設し、2010年6月までの4年間で70名の受診がありました。男性が51名、女性が19名、年齢は22~76歳(平均49.2歳)で、60歳代がピークでした。ニコチンパッチ時代の禁煙成功率は56%でしたが、約2年前に導入されたバレニクレン(商品名:チヤンピックス)の使用により、現在は70%ほどの禁煙成功率になっています。また、この4年間禁煙に成功した人たちが、その後禁煙を継続しているかを調べましたところ、約6割の人たちが禁煙を継続しておりました。


禁煙外来の卒煙式の様子。「がんばられましたね」と拍手でお祝い。
証書をお渡しした後、スタッフと記念撮影。

アンチエイジングドックの開設


ドッグの様子 - 体組成測定中。

2008年1月に日本抗加齢医学会専門医となり、その年の11月にアンチエイジングドックを開設しました。2009年2月には更年期と加齢のヘルスケア認定メノポーズカウンセラーとなり、更年期とそれ以降の女性のヘルスケアも実践するようになりました。

アンチエイジングドックを開設するにあたり、ドックをすでに実施されている全国のいくつかの施設を訪問し、私自身もドックを受け、結果説明を聞き、当クリニックにどのようにしてドックを導入するかを模索しました。その中で最も参考にさせていただいたのが、静岡市の田中消化器科クリニックでした。院長の田中孝先生は、日本におけるアンチエイジング医療のパイオニアの1人で、『よくわかるアンチエイジング入門一老化を防ぐ知恵とコツ」(主婦の友社)の著者であります。また、ドックを開設するのにあたり、いろいろとご支援をいただきました。当クリニックのドックの内容を表1に示しておりますが、このメニューは田中消化器科クリニックで行われているメニューをもとに、多少アレンジして作り上げたものです。

ドッグの様子 -
毛髪ミネラル検査のために髪を少し切っています。
通常の人間ドック、これは病気をみつけるためのドックが主でありますが、アンチエイジングドックは病気をみつけることも当然ですが、それ以上に患者さんの老化は肉体的年齢、身体能力、生活習慣病の有無などを科学的に検証し、その結果をもとに最適な健康状態(オプテイマルヘルス)をもたらすために、個々の患者さんに合わせたオーダーメード医療を提供することが目的です。このために人間ドックと異なって、表1表1 に示すような簡単な体力検査、体組成計測、骨量測定、ホルモン関係特殊検査、骨粗継症マーカー、抗酸化マーカー、動脈硬化検査、毛髪ミネラル検査、各種血中ビタミン測定、微量金属検査などがメニューに含まれています。表2には一部の特殊検査についての簡単な説明を載せています。

当クリニックのアンチエイジング医療は、日本抗加齢医学会専門医が1名、指導士で日本禁煙学会認定指導看護師が1名、メノポーズカウンセラー、サプリメントアドバイザーの資格をもつ事務1名、計3名のスタツフで、保険診療の時間帯とは別に自費診療の予約制で行っています。

アンチエイジング医療の現況


ご夫婦でドックを受診
2008年11月にドックを開設し、2010年8月までの1年10カ月の間に、ドツク受診者は58名で、男性24名、女性34名、年齢は14~81歳、平均61.9歳でした。うち8名はドックの結果でDHEA補充療法を受けた方で、3カ月後にDHEA補充療法の効果を判定するために2回目のドックを受けた方です。

ドックを受けた理由は、「病院にかかつて検査を受けても特別な問題はないといわれたが、体調不良が続き健康感がない」「現在通院しているが今ひとつ元気になれない」「自分の加齢度を知りたい」「ドックの結果をもとに生活習慣の見直しをしたい」「現在アンチエイジング的生活を心がけているが、その効果がどの程度出ているかを確かめたい」などでした。現在の保険診療では病名がつかなければ治療ができません。アンチエイジング医療では、最適の健康状態をオプテイマルヘルスという言葉で表現しますが、このオプテイマルヘルスと病気の間には、生活の質を低下させるさまざまな不健康状態が存在します。しかし、病院に行って、いろいろ検査しても異常がなければ、特に問題ありませんと帰されることが多いわけです。

現代の日本は飽食の時代といわれていますが、実はファストフードに慣れた現代人は、思わぬところで栄養不足に陥っています。現代人が食しているのはエンプティフードだといわれますが、エネルギー源となる炭水化物や脂肪などに偏りすぎて、肥満になっています。一方、体を構成しているたんぱく質の摂取量は少なく、また、生きていくために必要な物質を体内で生合成するのに欠かせないビタミンやミネラルの摂取も不足してぃます。これらの栄養の偏りが体調不良、元気のなさにつながります。

病院で行う一般的な血液検査のデータからも、その人の栄養状態をある程度診断することは可能です。かつての私も含め、多くの医師は検査データを栄養学的な見地から診るというトレーニングを受けていません。したがって、検査値が基準内にあれば「あなたは問題ありません」ということになります。しかし、栄養療法に精通した医師であると、不足するたんぱく質やビタミン、ミネラルなどの栄養素を検査データから診てとれるわけです。不足する栄養素をサプリメントなどで補うことにより元気になる方も多いのです。もちろん保険診療ではサプリメントの処方はできません。

女性の更年期は誰でも認知しています。更年期障害の病名で女性ホルモン測定をすることは保険診療でできます。しかし、男性更年期障害という病名で男性ホルモンを測定することはできません。男性更年期という言葉はまだ病名として認められていません。うつ的になっている中年の男性を診た場合、アンチエイジング医療では男性ホルモンを測定することは普通なのですが、保険診療ではそれができないという状態です。したがって、うつ病として治療されていることが多いと思いますが、その中には男性ホルモンの低下と過剰のストレスによって、うつ状態になっている男性更年期障害の人たちが紛れ込んでいる可能性があります。「意欲が沸かない」「体調不良」と感じている人たちへの医学的アプローチは、現時点においてはアンチエイジングドックが最適といえます。

ドック受診者の中には80代の方もいらっしゃいました。それらの方から「今更アンチエイジングドックを受けても何かためになるのでしょうか」というような質問を受けました。アンチエイジング医療は、これから高齢期に入っていく人たちためだけの医療ではありません。胎児期から亡くなるまで、あらゆる年齢に関係する医学であり医療です。アンチエイジングに早く取り組めば取り組むほど、その効果は上がると考えられますが、80代の方でも健康を増進するための手立てをお教えすることはできるのです。

ドックの結果、女性ホルモン補充療法を1名、男性ホルモン補充療法を1名、DHEA補充療法を8名、サプリメントによる栄養療法を36名がそれぞれ受けています。また、更年期障害や骨粗髯症が明らかになり、保険診療で女性ホルモン補充療法を受けている方が9名います。うち4名は更年期障害で、エストラーナを添付しており、平均年齢は51.8歳(47~55歳)、残りの5名の方は骨粗霧症で、エストリールを服用しており、平均年齢は67.4歳(60~76歳)でした。

ドック受診者58名のうち47名は当クリニックでフォローアップしていますが、「健康感を取り戻した」「元気になった」「前向きに取り組めるようになった」「集中力が増した」「疲れにくくなった」などを体感され、私たち医療者側もアンチエイジング医療が有効であることを実感しているところです。

 

カルチャー教室での啓発活動

2009年4月から、地元の新聞社が主催するカルチャー教室でアンチエイジング医学。医療の啓発活動を始めました。月に一度、木曜日の夜7時から1時間半、一般市民を対象に話をしています。第1回目は6回シリーズで、「専門医が教える若さを保つアンチエイジングの知識」と題して話しました。食事、運動、睡眠、ホルモン補充療法、サプリメントなど、アンチエイジングに必要な知識を取り上げましたが、そのときの受講者は16名でした。今年の1月からは3回シリーズで、更年期女性に的を絞り、「更年期を幸年期に変えるための必須知識」として話をしました。4月からは「美人になるためのアンチエイジング」と題して、ダイエットのための食事および運動の仕方、美肌になるための栄養療法などについて取り上げ、そして今は「妻も知っておきたい男性更年期」と題して、男性の生理、更年期障害、ストレスとうつ状態、ED などについて話をしているところです。1時間半の話の準備には大変な労力を要しますが、アンチエイジング医療、究極の予防医学の普及につながればと思い行っているところです。参加者は必ずしも多くはありませんが、このような地道な啓発活動が実り、女性更年期や禁煙についての講演依頼がくるようになりました。石の上にも三年、持続することが大事だと思っています。

今後の展望

2010年1月、北海道で初めて日本抗加齢医学会の認定医療施設に認定され、地元の新聞が取り上げてくれたこともあり、ドックの受診者は少しずつではありますが増えています。今年になって、高濃度ビタミンC点滴を導入したいと思い準備してきました。スタッフや私自身が点滴を実際に行い、効果を実感しているところです。癌の補完治療として高濃度ビタミンC点滴はなされていますが、アンチエイジングの手段としても、疲労回復、美肌、免疫力の向上、癌の予防などの効果が期待されます。当クリニックにおいても希望する方々に行っていきたいと考えています。

アンチエイジング医療を通して、うつ状態の方や精神科に通院しても元気にならない方が、ホルモン補充療法やサプリメントによる栄養療法によって元気になっていかれるのを経験しました。うつ状態をはじめ、精神疾患に対してもアンチエイジング医療は効果があるのではないかと感じています。

おわりに

最後に、私自身のアンチエイジング生活についてお話したいと思います。以前より多忙な日々でしたが、保険診療の合間にアンチエイジング医療を行うことで、新聞を読む時間もないほどにさらに忙しい毎日となりました。外来では患者さんに「1日40分以上のウォーキングを週に4日はしてください」と話すのですが、自分ではとても実行できる時間はありません。半年前から、加圧ウェアを着用しながら、鈴木正成先生考案の「ダンベル体操」を週に3日、昼休みに30分問、院長室にこもって行っています。この半年で腹囲は85cmから82cmへ、体脂肪率は23%から19%へ改善しました。また、四肢の筋肉量のみでなく、体幹の筋肉量も増え、落ちる一方でしたドライバーの飛距離も戻ってきました。この運動は短い時間ではありますが意外と効果があり、健康維持のために続けていきたいと思っています。また、サプリメントはさまざまなものを朝26粒、昼13粒、夕21粒を食後に摂っています。ビタミンC点滴も2週に1回は行っています。おかげで実年齢より若くみられ、風邪もひかず、多忙な毎日を元気に過ごすことができています。

日本のアンチエイジング医療を広めるためには、どうしても開業医の参入が、特に地方では必要と感じています。保険診療収入の伸びを今後は期待できない日本の現状を考えるとき、クリニックの生き残りをかけ、今からアンチエイジング医療を導入されるのも一つの方法かと思っています。大きな投資をすることなく導入は可能と思います。ただ、ドックレポートを書き上げるのに1人約1時間はかかります。オーダーメード医療ですので当然といえばそうかも知れませんが、その分の時間はとられます。いずれにしても多くの開業医の先生方が、地域のために、あるいは体調不良で生活の質が下がっている方々のために、アンチエイジング医療へ第一歩を踏み出していただければと願っています。

●プロフィール

医学博士。1974年北海道大学医学部卒業。長崎大学医学部第3内科助手、英国および米国留学後、長崎大学医学部講師を経て、1991年北海道大樹町立病院長。1999年に満岡内科・循環器クリニックを開業するとともに、現国立病院機構帯広病院にて不整脈専門外来を担当。

専門は循環器内科、不整脈。世界の主要な心臓病学会のフェロー(FACC、FESC、FJCC)。日本循環器学会認定循環器専門医。2005年よリアンチエイジング医学に関心をもち日本抗加齢医学専門医となり、また北海道で初めての日本抗加齢医学会認定医療施設となってアンチエイジング医療を実践している。

>> 日本抗加齢医学会

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